活かせなかったコロナ危機・・・医療編
コロナの感染が広まった際、政府は医療機関ごとのレベル分け(未知の感染症への対応能力)を行うことなく、全ての医療機関に患者の受け入れを要請した。
そのために入院を受け入れる体制をとれば、対応ベット一床につき1000万円近い補助金を出すという、札束で顔をひっぱたくという手段まで使った。
しかしながら、患者を多くの医療機関へ受け入れさせるということは、それだけ感染源を分散させるということで、感染を広めるリスクが上がる。
このようなときは、コロナ患者を専門に診る拠点病院を用意し、そこへ患者を集中的に集めることで、感染源をばらまかないことが基本だと思うが、政府の対策はこれとは全く逆となっている。
私立病院は慈善事業で医療を行っているわけではなく、ある程度の利益を得る目的で医療という事業を行っている。
従って、未知の感染症に対応できるようなお金のかかる体制は整えていないことが多く、またその体制が整えられてもその費用が経営を圧迫する。
一方、国公立病院の場合は経営上の赤字は税金で補填されるため、未知の感染症に対応できる体制を整えることで赤字になっても病院がつぶれることはない。
逆に、私立病院では経営上の問題から対応できないような特殊な疾患を国公立病院で診てもらえなければ、国公立病院に税金を注ぎ込む意味がない。
こういった背景を考えれば、今回のような未知の感染症が発生した場合、国公立病院の中から拠点病院を選別し、そこへ各国公立病院の専門医を集め、また私立病院からも協力できる医師を募集し集中的に治療をさせ、そこで対応できないような複雑な病態の患者だけを大学病院等の高度医療機関に依頼すれば良かったのではないだろうか。
そうすれば、拠点病院以外の医療機関はコロナに感染していない患者の治療に専念できる。
国公立病院の職員は医師も含め全員が公務員であるから、国や地方自治体の判断でそのような編成をすることは難しくはないはずであるし、そのために税金が使われているのではないだろうか。
結局、抜本的な対策が取れないうちにコロナが弱毒化し、2023年5月にコロナに対する規制は解除となった。
コロナ規制解除に伴い厚労省は各医療機関に「コロナ患者であることを理由とした診療拒否は応招義務違反となる」との通達を送り、コロナ患者の診療を診療を医療機関の能力に関係なく、全ての医療機関に半ば強要した。
コロナ規制解除に伴い突然コロナが消えるわけではない。
感染防御態勢がとれていない医療機関では、多くの医療従事者がコロナに感染するリスクが高く、そうなればコロナ以外の疾患を診る医療従事者がいなくなってしまう。
こんなやり方は、第二次世界大戦時に竹やりで機関銃へ立ち向かえと国民を訓練していたことと変わりなく、政治家や官僚が考える政策とは時代が変わっても何も変わっておらず、彼らは歴史から何も学んでいないことを示している。
今回のパンデミックは、国公立病院と私立病院のあり方、パンデミックへの柔軟な対応ができる医療体制の構築など日本の医療体制を大きく変えるチャンスであったのに、それを活かすことができなかったことが悔やまれる。
コロナが去っても新な感染症が現れる可能性はあり、今のうちにそれに対応できる医療体制を構築する必要がある。
コロナを「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で終わらせてはならない。
今の政府の対応は、正に「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないだろうか。
今の政府の対応は、正に「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ではないだろうか。