リビングウィル(2回目) 栄養管理
前回は、心肺蘇生についてお話をしましたが、今回は栄養管理についてお話をしたいと思います。
栄養管理については、通常は数日食事を抜いてもすぐに生命が危険になるという事はありませんので、心肺蘇生の時のような緊急性はありません。
栄養管理が問題になってくるのは、様々な理由から、口からものを食べることが困難となったときです。
この場合は、大きく4つの選択肢があります。
1)何もしない
2)点滴
3)中心静脈栄養
4)経管栄養
では、各項目について説明します。
1.何もしない
これは、脱水・飢餓に追い込み、短期間で命を失う可能性のある究極の選択です。
この選択肢を選ぶと、多くの医療機関では、治療の必要性がないことを理由に受け入れを断られるかもしれません。
2.点滴
これは、手や足の表面の血管に針を刺し、そこから血管内へ液体を入れる方法で、皆さんも病院で点滴をされている患者さんをよく見かけるのではないでしょうか。
最大の欠点は、手足のような細い血管へエネルギーの高いものを入れると血管を傷める可能性があるため、十分なエネルギーを入れられないことです。
従って、この方法で栄養管理を行うと数か月程度で命を失う可能性が高いです。
また、栄養状態が悪くなってくるため、血管の中に水を引き留めることができなくなり、点滴で入った水が血管の外へ出てきて、いわゆる浮腫みが目立ってくることもあります。
3.中心静脈栄養
中心静脈とは、心臓のすぐ近くにあり、全身から送られてきた血液を心臓へ送り込む太い血管です、
このような血管では、多量の血液が流れているため、高濃度の液体を入れても直ぐに希釈されてしまいます。
これを利用したのが、中心静脈栄養です。
主に首か足の付け根から静脈内へチューブを入れ、静脈内を通してチューブの先端を心臓の近くまで持って行きます。
こうすることで、末梢輸液ではできなかった高カロリー輸液を行うことができ、生存に必要なエネルギーを体内に入れることができます。
チューブを入れる部位は、首、足の付け根以外に肘から入れる場合もあります。また、最近では、あまり行われませんが、肩の近くから入れる方法方もあります。
中心静脈栄養の問題点としては、
1)見えない血管を狙って針を刺しますので、血管近くの臓器、動脈、神経の損傷等の事故が起こる可能性がある
2)カテーテル(血管内のチューブのことです)に細菌が付着し感染の原因になる可能性がある
3)長期的には、消化管の機能低下を起こす
などが挙げられます。
4.経管栄養
経管栄養とは、胃の中に管を入れ、その管からいわゆる流動食(液体)を流し込む方法方です。
胃の中に管を入れる方法は2つあり、一つは鼻の穴から細いチューブを入れ、鼻→喉→食道→胃のルートです。これを、経鼻経管栄養と言います。
この方法では、チューブを入れる際、患者さんの喉を刺激したり、鼻やのどに違和感を与える可能性があります。
もう一つの方法は、お腹から胃に小さな穴をあけ(これを胃瘻といいます)、そこにチューブを入れて、胃の中に栄養剤を流し込む方法です。
この方法であれば、チューブが喉を通ることはなく、患者さんの鼻やのどを刺激することはありません。
また、チューブの交換期間が鼻からチューブを入れる場合よりは長くなるというメリットもあります。
但し、お腹に小さな穴をあけるという外科的処置(手技自体は簡単で、内視鏡を用いて行います)が必要になりますので、そういう意味でのリスクはあります。
この方法の最大の利点は、消化管からの栄養吸収を促すため、自然に近い形での栄養吸収ができるという事と、十分なエネルギーを入れられるという事です。
但し、下痢や誤嚥性肺炎等のトラブルが起こる可能性もあります。
以上、栄養管理について述べてきましたが、ご自分が食べることができなくなった時、或いは食べると誤嚥を起こし誤嚥性肺炎を生じる可能性が高い時、どのような栄養管理を希望されるのか、考えておくことも大事なことではないでしょうか。
